「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会取りまとめ(令和元年12月13日)」雑感

「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会取りまとめ(令和元年12月13日)」雑感

(1) 趣旨

取りまとめの趣旨がもう一つ不明瞭である。

「1.はじめに」において、一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」の設置理由として「一般介護予防事業等に今後求められる機能や専門職の関与の方策、PDCAサイクルに沿った更なる推進方策等を集中的に検討し、介護保険部会の議論に資するため」と記載し、趣旨を説明しているが、取りまとめの内容は、ほぼ平成26年介護保険制度改正における新しい地域支援事業の制度設計時点で説明済みのものであり、新たな制度設計に向けた提言には程遠いという内容である。
(2) 今後の課題として整理された内容
今後の課題として、「3.一般介護予防事業等に今後求められる機能」において整理している。しかし、その内容は、「積極的な広報」、「先進事例を類型化しての自治体等への周知」、「社会参加の観点からのボランティアポイント制度等の推進等」などを提起しているが、この点もこれまでに一般的に指摘がなされてきている内容のもので目新しく「今後求められる機能」として整理すべき内容のものではない。
(3) 具体的方策の内容
具体的な方策として以下の3点を設定している。
「(1) 地域支援事業の他事業との連携方策や効果的な実施方策、在り方」
「(2) 専門職の効果的・効率的な関与の具体的方策」
「(3) PDCAサイクルに沿った推進方策」
①「(1)」について
総合事業である「一般介護予防事業」と、他の地域支援事業との連携方策は、現状の状況を踏まえて一定整理されている。しかし、示された内容は新味に欠け、具体的な方策が提示されているとは言いがたい内容となっている。
また、現行制度に対する意見として、①総合事業の対象者の弾力化、②総合事業の上限上限額設定の弾力化が示されているが、制度改正当初より指摘されている事項であり、これに対しての踏み込んだ制度設計を提示することができていない。
②「(2)」について
ここでは、「通いの場等の一般介護予防事業への専門職の関与」及び「地域リハビリテーション活動支援事業の在り方」についてコメントをしているが、これについても、特段に新たに課題を提起し、及び対応策を打ち出すような内容のものではない。
なお、通いの場については、住民主体であることや、その形態が地域に増えてきていることから、効果が期待されているところである。取りまとめでは「通いの場に参加できない者」への対応の重要性を述べているが、一般的な提示に留まっており、この点に絞っての検討が今後待たれる。
③「(3)」について
一般介護予防事業の一つである「一般介護予防事業評価事業」は、「事業評価指標の選定が市町村に委ねられており、実施状況の適正な評価が困難と判断されている」としている。このことから「今後国は指標を検討し、一般介護予防評価事業の見直し等を行うことが必要」とし、「介護予防に関する指標案」を提示した。今後、市町村における評価事業に資するものと考える。
(4) まとめ
「介護予防」については、制度当初は、「介護予防・生活支援事業」として始まり、介護保険制度の枠外で、「生きがいデイサービス」などとして各市町村で展開された。そして、平成17年法改正で「予防重視型」の大きな改正が行われたが、その際に、生活機能評価と特定高齢者施策が展開されることとなった。その後、平成26年の法改正で、地域支援事業が再編成され総合事業が創設された。紆余曲折があったが、結局、平成18年度からの予防重視型システムがうまくいかず、保険制度の枠組みから軽度者を外して市町村事業に戻したという形となっている。
一般介護予防事業は、当該事業を軸にした検討では、限界があるため、介護予防全体の制度として総合的に検討するこを要し、及び高齢者向けの保健事業(74歳までの医療保険者の保健事業及び75歳からの後期高齢者医療制度の保健事業)との相関を踏まえながら検討するべきである。
なお、私見では、要支援者への介護予防については、ケアマネジメントと予防給付は、保険制度の枠組みに戻すべきであると考えており、その点については、別の機会で議論をしたいと考えている。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08408.html

以上