自治体職員をどう生きるか(後藤好邦・著)学陽書房読者モニターブック・レビュー
学陽書房(行政)
学陽書房読者モニターブック・レビューを記します。
★書籍のタイトル、著者、テーマ等
・タイトル:「自治体職員をどう生きるか」(30代からの未来のつくり方)
・著者:後藤 好邦(山形市職員。東北まちづくりオフサイトミーティング発起人)
・テーマ、背景
時代が変化している状況下、正しいことを導き出せない現代社会において、著者が、仕事や、ネットワーク等を通じ様々な人たちとの紡ぎの過程の中で得た「ワーク・ライフ・コミュニティ・バランス(以下「WLCB」)」のコンセプトを、特に、自治体職員として正念場を迎える「30代に向けて」という形をもって全ての自治体職員に説く。
単なる仕事術ではない。「自治体職員『は』・・・」と解釈、解説せず、「自治体職員『を』をどう生きるか」という主体的な生き方を問いかける。
★はじめに
本書を手にし、本書のタイトルから、次のことを念頭に読み始めた。
✓なぜ「自治体職員『は』どう生きるか」でなく「自治体職員『を』どういきるか」なのか?
✓なぜ、「30代」なのか?
この点については、私自身のこれまでの公務員生活、その中での「WLCB」を振り返り、重ね合わせて読み進めることとした。
✓ハウツー本、自己啓発本、仕事術本なのか?
凡庸なハウツー本では、コミュニケーションスキル、ポジティブシンキングなどテクニックを解説し対症療法的な術の紹介が多い。本書は、ハウツー本でも自己啓発本でもなく、敢えて分類すれば「生き方論」「公務員論」ともいうべきか。
✓また、著者とのご挨拶の折、「私はスーパー(公務員)ではありません、普通の公務員です。」と述べられたことが非常に印象的であった。本書を読む前に、普通の公務員であることが本当なのか、ということも念頭に置いた。
★内容について
*アウトライン
「民官双方で公に資する人材」になれるのが自治体職員であり、そのことを目指すための「WLCB」の考え方を提示。そのために、自治体職員としての礎を築き、及び「真の公務員」として大きく飛躍する時期である「30代」において、「『知』域活動」や「未来の常識」などをスタンスとしながら「働き方改革」、「磨くべき仕事術」、「成長術」を習得することを提起し、自治体職員の本番40代、そして職員としてのターニングポイントである45歳を迎えるための準備を進めていくことを説く。
具体的に様々な仕事術を提唱するが、根底には、正解のない成熟社会という時代認識のもと、社会の変化を的確に捉え(レゴブロック型社会論)、パラダイムチェンジをし最適に対応する自治体職員像(真の公務員カテゴリー論)を創出せしめるための具体策を示したものとなっている。
*印象的な点
著者が繋がった人たちから影響を受けた種々の「言葉」や「助言」等、仕事を通じて得た到達点等を踏まえた「珠玉全集」であり、キーワードが随所に散りばめられており、そのトピックは目次でほぼ確認できる。
単に、羅列したものではなく、すでに先達者たちが到達したコンセプトを著者自身が理論と実践を統一して得たコンテンツとして血肉化し、「後藤式」にまでブラッシュアップしたものであり、頗る説得力がある。
★まとめ
公務員論、人生論の書籍として、珠玉の一冊。自治体職員にとっては、視座を高めること必至の書籍である。30歳代だけでなく、あらゆる年代の職員、そして部課長など管理職にとっても本書を「自分ごと」として捕らえて読めば「バイブル」にもなりうる。
後藤氏は、本書に「WLCBで人生を豊かに!!」とサインをされる。また、講演等の際に「1人の100歩より、100人の一歩」、「日常でできないことは、非常時もできない」をキーワードにお話をされる。やはり、このことが、本書の底流に存する基本的なコンセプトであろう。
≪追補≫
後藤氏は、やはりスーパー公務員でした。その証左として、「自治体職員が目指すべき4つの人材像」のくだりは、悉く「後藤式」としてそのノウハウを昇華されており、「普通の公務員」では、その域に達することは相当難しいと感じました。自治体論の第一人者であり、スーパー公務員であると瞠目するものです。少しでも近づく努力をすることが肝要であると感じ入りました。また、引き出しの多さに感服したところです。
次回は、後藤氏のプロフェッショナルとしての仕事、また、ジェネラリストとしてのオフサイト活動などネットワークに特化した専門書的な著書の上梓を期待しています。
【学陽書房】
http://www.gakuyo.co.jp/book/b481178.html
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